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パンのみに働くにあらず

  • Posted by: tomix
  • 2009年1月 6日 01:14
  • business

派遣切りのニュースが毎日流れていますね。インタビューで答えている人が、僕とさほど年齢の変わらない人が多く、自分もフリーランスかフリーターかわからない時代を経て今に至るので、一つ間違えば自分がインタビューを受けていたかもな、いや来年の今頃受けてるかもとか考えることもあります。

若くってお金がなかった頃は、市ヶ谷の印刷会社に早朝ならんで日雇いの仕事をした時代もありましたので、工場で歯車のように働く労働者のあり方っていうものなんとなくですがわかります。

一方、小さいながらも経営者だったりもするので、専門性の高い仕事ではなく、入れ替え可能な労働だったら、企業が市場で生き残るためには、かわいそうかもしれないけど、厳しい決断をしなければいけないんだろうなとも思います。

資本主義である以上、仕方がないんです。企業活動ってほっておけば生き残りゲームですから。消費者にとって競争は安価でよい製品こそが欲しいもので、談合して高くって質が悪いものを買わされるのはたまったモノではありません。

消費者の必要以上かもしれない欲求の結果が、現在の雇用問題を生んでいるかもしれないっていう側面があることも気づく必要があるかもしれませんね。

とは言え、資本主義以上のよいシステムを人類はまだ発明できていない訳ですから、その中でうまく生きていく必要があるわけです。そのためにはどうすればいいのか?ちゃんとした会社勤めもせず生きてきた僕が一つだけ考えていたのは、「パンのみに働かない」ということでした。

「パン」とは「お金」の事です。お金のためだけに働かない。という意味です。もとの言葉は聖書にある言葉ですから(働くにあらずでなく、生きるにあらず)、物質面だけでなく、精神面も満たされなさいという意味だと思いますが、僕が考えていたのはもっと単純でした。要するに働いて「お金」だけしかもらえないんじゃ時間がもったいない。「お金」プラスαが手に入る仕事を探そう。ということです。

プラスαってなにか。経験とか、知識とか、人脈とか。その時々に自分が欲しいものが手に入る仕事を探しました。特に若い時は得られるお金よりそれを優先しました。それが次に得られるもののグレードを上げてくれると思ったからです。

自分ひとりを、自分会社の経営者と考えてみるとします。そうすると自分会社の資本ってなんでしょう。まずは自分の体。体が資本だとはよく言いますよね。次に自分の持っている時間。時給、月給っていうぐらいですから、時間を売っている訳です。

ここまでは誰でもがもっている資本ですから、他社と差別化した投資が出来ません。そこで、他社とは違った資本(プラスα)を獲得して投資(商売)をしなければならない。

だから「パン」のみに働いている余裕は無いわけです。お金がなければ無いほど、「パン」のみに働いていては、どんどん負けていってしまう。何でもいいので働いている時間のなかで、「一粒で2度美味しい」必要があるわけです。

ドラッガーは、高度に発達した社会では、「お金」という資本より「知識」という資本のほうが価値を持つということを「知識主義社会」という言葉で説明しました。知識や経験といった資本は、人的資本ですので、株式とちがって実体以上に売買もできないし、売りたくなければ売らなきゃ言い訳なので自分が自由に持ち運べます。

その代わり自分が資本ですから、労働時間を切り売りするような事は出来ません。例えば、デザインの仕事のようなものは、結果がすべてでかけた時間に意味はまったくありません。

だから家に帰ろうが、会社にいようがデザインがひらめくまではずーっと頭のなかから離れないわけで、帰りしなの本屋さんで唸ったり、深夜に飛び起きてひらめいたデザイン案を書き留めたりと、大体定時とか労働時間って発想はまったくありません。でもそのなかからデザインが生まれて採用されたとき、自分の中に明かにひとつ引き出しが増えている。これもプラスαです。

僕の友人でも、そんな僕のような生活は嫌だといっていた人がいました。できれば会社の時間は、会社できちんとお金の分働いて、そこで得たお金で、帰ってきてから自分の好きなようなことをしたい。その気持ちはわかります。僕だってたまには仕事から解放されたい。

でもそれを我慢してきたから、今の自分があるのかなぁとか、思ったりするわけでした。贅沢を言えば、もっと経験をつめば積むほど、年齢を重ねれば重ねるほど円熟味がまして、唯一無二になれるような仕事だったらよかったのになぁとか思います。

僕の仕事はウェブやインタフェースといった、技術革新の激しい業種ですので、日々の経験の積み重ねを忘れて気をゆるめると、今まで積み重ねたものが、まるでバブル崩壊のように一瞬にして価値を無くしてしまう可能性があるからです。

テレビで、iPodのうらの金属面を磨いている集団、「磨き屋シンジケート」の話題がやっていました。この不景気のなか、仕事は増える一方で、円高の影響も全くないそうです。

磨く必要があるモノがある以上、積み重ねてきた経験と技術が、時代が変化しても柔軟に対応でき、他者を圧倒している。磨く技術は、向上心をもって仕事をすればするほど高くなっていくから、先達は後進を育成し、技術の伝承もきちんと出来ている。

小さな会社が数十社あつまってそれを実現している姿をみて、自分のいる業界でもこういう事ができないかなとか思いました。

いま派遣切りにあった人が、この記事を読む確率は低いかもしれないけど、今からでも遅くないので、プラスαを探してください。僕も円熟できるプラスαを探したいと思います。

    

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